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出産までにやっておくべき「歯のこと」5選

2025.07.08|コラム


👉この記事は、こんな方におすすめ

✅「歯のことより赤ちゃんが優先」と思っている方

✅つわりで歯磨きできるか不安な方

✅赤ちゃんに虫歯菌をうつしたくない方

妊娠すると虫歯や歯周病が増えるって本当?

妊娠がわかると、出産までに歯科健診を受けるよう勧められることがあります。
実際、多くの自治体では妊婦健診の一環として歯科健診が設けられているほどです。

「出産後はなかなか歯医者に行く時間がないから」と思う方も多いかもしれませんが、実はそれだけではありません。

昔から「一子を得ると一歯を失う」と言われていたように、妊娠と歯の健康には深い関わりがあるのです。
これは決して迷信ではなく、ホルモンバランスや体の変化により、お口の環境が大きく変わることが理由です。

1. 妊娠中、口の中はこう変わる!

妊娠すると女性ホルモンの影響などで、口の中のバランスが乱れやすくなります。主な変化は次の2つです。

1. 唾液が減る

唾液には、口臭を抑えたり、酸性に傾いた口内を中和して虫歯を防ぐ働きがあります。
妊娠中は唾液が減りやすく、口臭や虫歯のリスクが高まります。

2. つわりの影響

  • 吐き気で歯磨きが難しく、磨き残しが増える
  • 食べづわりで飲食回数が増え、歯垢がたまりやすくなる
  • すっぱい・甘いものなど、虫歯になりやすい味のものを好むようになる

これらの要因が重なって、虫歯や歯周病のリスクが上がってしまうのです。

2. 妊娠性歯周病に要注意!

妊娠中はホルモンや体調の変化により、口腔環境が悪化しやすくなります。特に気をつけたいのが「妊娠性歯肉炎(歯周病)」です。

歯周病は口の中だけでなく、全身やお腹の赤ちゃんにも影響を及ぼすことがわかっており、1996年の研究では、歯周病があると早産や低体重児のリスクが約7倍に上がると報告されています。これは喫煙や飲酒よりも高いリスクです。(1996年のOffenbacherらの研究)


その理由は、歯周病の炎症物質が血流に乗って子宮に届くことで、早産の引き金となる「プロスタグランジン」が過剰に分泌されてしまうためです。これにより、子宮収縮が早まり、赤ちゃんの発育にも悪影響を及ぼす可能性があります。

実際、妊娠中の約9割が歯周病にかかっていると言われています。初期の歯周病は自覚症状が少なく、気づいたときには悪化していることも。

早めの健診と予防ケアで、母子ともに安心できる出産を目指しましょう。

3. 赤ちゃんの虫歯予防は、ママのお口から

虫歯の原因となる「ミュータンス菌」は、生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には存在しません。
けれど、大人とのスキンシップや食器の共有などを通じて、少しずつ感染していくことが多いのです。

だからこそ、妊娠中のうちに虫歯を治し、口内の環境を整えておくことが赤ちゃんの虫歯予防にもつながります。

また、この時期に正しいデンタルケアを学んでおくことは、将来お子さんに歯磨き習慣を教えるうえでも大切な準備になります。

妊娠中は虫歯ができやすい時期でもあります。
「出産後に虫歯だらけ…」なんてことにならないように、早めの治療と日々のケアを心がけましょう。

4. 歯磨きで気持ち悪くなるときは?

つわりがつらいと、歯磨きが一気にハードルの高い行為に感じるもの。
そんなときは、「決まった時間に磨く」ことにこだわらず、体調のいいタイミングを見つけてケアしましょう。

  • ヘッドの小さな歯ブラシを使う
  • 下を向いて、小刻みに磨く
    → 舌の刺激を減らすことで、吐き気が起こりにくくなります。

歯磨き粉の香りがつらいときは…

  • 自分の好きな風味の歯磨き粉に変えてみる
  • それでもダメなときは、洗口液やマウスウォッシュだけでもOK!

どうしても歯ブラシを口に入れられない日があれば、

  • やさしい味の洗口液でうがいする
  • キシリトールを活用する(※量は調節しましょう)

無理せず、“できる範囲のケア”を積み重ねることが大切です。

5. 安定期に入ったら、歯科健診を忘れずに

自治体によっては、妊婦健診に歯科健診が含まれていることもあるほど、妊娠中のお口のケアは大切とされています。

特に注意したいのは、妊娠性歯肉炎や虫歯。
「歯医者が苦手でつい先延ばしに…」という方も多いですが、妊娠後期に痛みが出て慌てて受診しても、出産までに治療が終わらないこともあります。

また、出産時はいきむために歯を食いしばることが多く、歯に痛みがあると力が入れにくくなってしまいます。
臨月になるとお腹が重くて診察台での仰向け姿勢がつらくなることもあり、出産後は育児でなかなか時間が取れません。

だからこそ、つわりが落ち着いて麻酔も使いやすくなる安定期(16週ごろ)に、早めに歯科健診を受けておくのがおすすめです。

出産前の今だからこそ、無理のない治療計画を立てて、安心してお産の日を迎えましょう。

最後に

妊娠中の歯科健診は、自治体の助成で無料になるケースも多くあります。
利用できる制度は、ぜひ積極的に活用しましょう。

この時期は、自分のオーラルケアが、赤ちゃんのお口の健康にも関わるということに気づく大切なタイミングでもあります。

妊娠中だけでなく、産後もかかりつけ歯科で定期的な歯石除去などを受けながら、継続的にお口のケアを続けていける関係づくりができると理想的です。

助産師 浅井先生  監修:助産師 浅井 貴子 先生
産後ケアホテル マームガーデンリゾート葉山アドバイザー。赤ちゃん訪問指導歴30年以上のキャリアを持つ助産師。アロマ・ハーブ・運動療法を組み合わせた産前産後の代替補完医療や母親に寄り添った育児アドバイスに定評があり雑誌やWebなど各メディアでも注目されている。